3/11
いつもと同じ穏やかな朝。
天気予報では午後から天気が崩れ、雪になるかもと話していた。
今日はごみ収集の日ではないのに、異様なほどカラスが鳴いているのが気になった。
いつもどおり、子供たちを学校へ送り出して職場へ向かった。

忙しさのピークが過ぎたとろで、私の退職に向けて新しく入社したパートさんに
仕事の引継ぎをしている時だった。
職場で流しているラジオからの【緊急地震速報】。
「大きいのが来ますよ!」という同僚の言葉と同時に、
避難口を確保するために窓と出口の扉を開けに走る。
次の瞬間、ガタガタという揺れがどんどん大きくなり
身を隠すスペースのない建物の中は危険と判断。
スタッフ全員で外へ出る。

激震。
近くの病院が大きく揺れているのが見える。電柱も折れるのではないかと思うほど。
遠くでは建築中の家の瓦がバラバラと落ちていた。
職場の中では蛍光灯がチカチカッと光ってあっという間に消えた。
一瞬収まるのかとも思ったそのとき、ゴゴゴッという音とともに更なる激震がやってきた。
「電柱が倒れるかもしれない!気をつけて!」と上司が叫ぶ。
丸くなって手を繋いだがそれでもたまらず、全員で地面にしゃがみこむ。
地面が割れそうなほどの激しい揺れ。
近所に停車中の車の防犯アラームが鳴り続けている。怖い。
とてもとても長い時間だった。
早く治まって!ただただそう願うしかなかった。

ようやく激しい揺れが収まる。
でも、手足の震えが止まらない。子供たちは大丈夫だろうか?
まだ学校にいてくれれば、多少は安心だ。
息子はまだ学校にいるはず。娘は?
ちょうど下校の時間ではないだろうか?家で一人だったら?
良くないことばかりを考え、不安になる。
ほんの一瞬の隙を突いての通信だったのだろうか。
携帯に夫からの着信とメール、遠くに住んでいる友人や身内からのメールが入っていた。
しかし、今は携帯でも固定電話でも通信することができない。
子供たちを早く迎えに行かなければ。
停電のため、ラジオの電源を乾電池に切り替える。
津波警報が流れている。6メートルとか10メートルとか、信じられない数字が耳に入ってくる。
「これは大変だ・・・」上司の顔が曇る。
ありとあらゆる物が散乱し、めちゃめちゃになった職場をそのままに
皆、家族の元へと急いだ。
どんよりとした気味の悪い黒い雲が空を覆っていた。

通勤に使っている駐車場の大家さんに呼び止められる。
「今、帰るのは危ない」と。
停電で信号が全く機能しておらず道路はパニックになっているらしい。
「子供がいるから帰らない訳に行かない」と告げて車に乗り込む。
運転している間もひっきりなしに余震がやってきて車が大きく揺れる。
ガソリンの残量が少ないのが気になったが、災害時も給油できるスタンドは自宅とは逆方向。
とにかく早く子供たちの元へとそのまま学校へと向かう。
やはり道路は渋滞。いくつかの交差点ではそれぞれに譲り合い、なんとか通過することができた。
自宅近くまで到着すると、親に付き添われて下校する子供たちの姿がある。
どうか無事で。急いで学校へ向かう。

昇降口では先生が教室までの誘導をしてくれていた。
混乱して、わが子の教室に行くには2箇所あるどちらの階段を上ったらよいのかが分からない。
落ち着こう、落ち着こう、と思えば思うほどオタオタしてしまう。
娘の教室に到着。私の顔を見て安心した表情の娘。良かった。
「下校させる前で本当に良かったです」先生も泣きそうだった。
娘と手を繋ぎ、一つ上の階にある息子の教室へ。
息子も同じようにホッとした表情で私の元へやってきた。
二人の手をぎゅっと握り、自宅へ向かった。

家の中はきっと大変な状態だろう、と覚悟をしてドアを開ける。
ところが想像に反して、どの部屋も被害はなく綺麗な状態だった。
荷物の多くを引越しの準備のためにダンボールへつめてしまっていたためか。
食器棚の中で食器が崩れ、扉を開けた時にご飯茶碗が床へ落ちて一枚割れただけ。
あれだけの激震だったにもかかわらず、家具家電は一つも倒れることなく無事だった。

余震が続き、家にいるのは怖い。
またあの激震がやってきたら?怖くて眠ることができないだろう。
特に娘は揺れるたびに怯えている。
外は時折、吹雪のような強い風と横殴りの雪が降っている。寒い。
同じマンションの方から、学校の体育館が開放され避難できると教えていただく。
少しの食料と、毛布を抱えて体育館に避難することにした。
少なくとも家にいるよりは安心だ。

夕方避難した体育館の中は夜には避難してきた地域住民で一杯になっていた。
市役所からは非常用のクラッカーが配られ、
しばらくすると地域で災害用に備蓄しているアルファ米が炊き出しとして配給された。
ありがたい。
少しでも何か手伝えればと、ご飯のパック詰めを友人と一緒に手伝う。
途中でパックが足りなくなり、ならば【おにぎり】にということになったがラップがない。
我が家は学校から近いので、持ってくるよ。と、一旦自宅へ向かう。

外へ出ると、一面の闇。一帯が広範囲で停電しているため本当に真っ暗だ。
電気があることが当たり前になってしまった今、「夜ってこんなに暗いのか」と本来の当たり前のことに驚く。
上を見上げれば、満天の星。
「綺麗だ」と思わずつぶやく。
この非常事態に星が綺麗だなんて言って良いものかとあわてて口をふさいだ。
真っ暗な部屋から手探りでラップを数本取り、学校へと急ぐ。
残りのご飯をラップを使って【おにぎり】にし、今日の食事の配給は終了。

こんな時に限って買いおいている食材が少ない。ガソリンの残量も少なく手持ちの現金も少ない。
おまけに携帯の充電も残りわずか。
そのすべてを今日の夕方に満たそうと思っていたのだから。
携帯電話には友人、身内から次々と安否を心配するメールや着信が入ってくる。
無事を知らせたいが、こちらからの通信はほとんどできない。
いつまで食料がもつだろうか?水は?不安ばかりが募る。

時間だけはいつもと同じように刻々と過ぎてゆく。
深夜、避難所の夜は寒い。本当に寒い。
子供たちと三人で身を寄せ合って毛布に包まっても温まらない。
明日はもっと布団を運ばなければ。
度々やってくる余震に怯え、ほとんど眠れないまま朝を迎えた。
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by tam-gokochi | 2011-03-21 15:03


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