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ほとんど眠れないまま朝を迎える。
時計を確認すると5時。外はまだ薄暗い。
避難している小学校の体育館の入り口では、
町内の防災担当の方々が寝ずにストーブの番をしてくれていた。
発電機につないだテレビからは信じがたい映像が次々に流れてくる。
これは、夢なんじゃないだろうか?何度そう思ったことか。

小さくまるまって寝ている子供たちを起こさないように
そっと毛布を抜け出し、自宅へ向かった。
もっと暖かい布団と食べられそうな食料をもって来なければ。
外は刺すような冷たい空気。救急車と消防車のサイレンが鳴り響いていた。

驚いたことに自宅のポストには朝刊が届いていた。
この状況で?!情報から遮断されていたので、新聞から得られる情報がありがたかった。
とりあえず新聞をかばんに突っ込み、充電切れの携帯電話を車のシガーソケットにつないで充電し
その間に自宅から必要な物をかばんに次々と放り込んだ。
昨日はあわてて出てきたので、電気のブレーカーを下げ忘れている。
すべてのブレーカーを下げ自宅を後に再び避難所へ戻る。

新聞を読み被害の大きさを知る。目を覆いたくなるような内容。
新聞を読んでいると、数人の方から「どこかで配っていたの?」と聞かれる。
「自宅に戻ったら配達されていた」と伝えると、驚いていた。
みんな情報が欲しいのだ。一通り読み終えた後、良かったらどうぞと渡す。
皆、険しい表情で記事を読んでいた。
どうやら、他社の紙面は届いていないようだ。
こういう時、地元紙は強い。

徐々にざわめきだつ体育館。
子供たちも起床し始め、にぎやかになってくる。
全く送信できなかった携帯の電波が若干復旧したようだった。
昨日、心配して連絡をくれた友人たちにとりあえずの無事の報告メールを送る。
そうこうしてしているうちに、朝食の配給が始まった。
夕べと同じアルファ米、一人1パック。
食べ盛りの子供たちにはそれだけでは足りない。
自分の分を子供たちに食べるように渡す。
食べないと体がもたないのは分かっているが、どうにもご飯が喉を通らないのだ。

こんな状況で店舗が営業してるか分からないが、お腹を空かせた子供たちのためには
何とかもっと食料を調達しなければ。
近所にはドラックストアとスーパー、コンビニがある。
何でもいい。口に入る物があれば。
そんな思いで子供と一緒に買出しに出ることにした。

コンビニは夕べまでで店の在庫がなくなったようで、入り口は閉じたままだった。
ありがたいことに、ドラッグストアとスーパーは店頭で在庫限りの販売をしてくれていた。
どちらもすでに長い行列ができていて、買うまでにかなりの時間がかかりそうなのは一目でわかる。
列が若干短く見えたドラッグストアへ並ぶ。
商品を手にするまでに2時間半ほどかかった。
店先では、いつもの店員さんが三人。一人が商品を読み上げ一人が電卓をたたく。
もう一人はバックヤードから在庫を補充。休んでいる暇などない。
こんな状況にもかかわらず、数日前のチラシに掲載されていた特売価格での会計。
頭が下がる。本当にありがたかった。
お腹にたまりそうなものは、ほぼ売り切れていたが何もないよりはマシ。
お菓子と春雨スープ、栄養補助ゼリーやペットボトルのお茶などを買うことができた。

なんだか、どっと疲れが出てしまった。
夕べはほとんど寝られなかったので、余計にしんどい。
日の高いうちは自宅で過ごすことにした。
幸い自宅はチョロチョロとだが水がでる。
しかし、いつこの水が止まるかも分からない。できる限りの水を汲み置く。
子供たちは、引越しに向けて片付けてしまったトランプやカードゲームを
閉じたダンボールから探し当てて、退屈しのぎをしていた。
依然、電気は止まったままだがNTTの電話回線は使えるはずだ。
繋がるかどうかは分からないが、ダメもとで埼玉の実家へ電話をかけてみた。
なんと。繋がった!
携帯電話は充電の電源の問題もあるが、何より通信状態が最悪であてにならなかった。
この固定電話での実家との連絡が私の精神的な支えになってくれた。

受話器越しの母の声を聞いたとたん、張り詰めていた何かがプツンと切れ
とめどなく涙が流れる。
これ以上に両親を心配させてはいけないと泣いているのを悟られないように
頑張ったが、母はすぐに察したようだった。
「充分頑張ってると思うけれど、もう少し頑張って。子供たちはあなたが頼りなのだから」
と励まされる。
「こんなことが起こるなんて、12月にお父さんと一緒に引越ししていれば良かったね」
と二人で苦笑いして、夕方になったらまた避難所に戻ることを伝え電話を切った。

日が傾き、暗くなる前に避難所へ戻る。
夕べと同じように配給のお手伝いをした。昨日よりも避難してきた人が増えたようだった。
おにぎりの求めて並ぶ列が体育館をぐるりと一周するくらいの勢いだ。
結局、最後尾の方までは、おにぎりの配給が行き届かなかった。
更なる不安を抱えたまま夜は更けて行く。
by tam-gokochi | 2011-03-22 22:09


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